[イラストで描く世界史人物伝] Vol.7 クセルクセス1世

2020年9月4日

Vol.4からしつこく続けてきたアケメネス朝の歴代王シリーズだが、最後はペルシア戦争の中でも、特に有名なテルモピュライの戦いでレオニダス1世率いるスパルタ軍と戦った、アケメネス朝第4代目王クセルクセス1世を描いてみる。

アケメネス朝の正統プリンス

前回のダレイオス1世で、出自不明の彼が王座につくまでは怪しい流れがあったと書いたが、このクセルクセス1世は初代キュロス2世と直接血の繋がった正真正銘の王の血統だ。

といってもダレイオス1世とクセルクセス1世も直接的な血の繋がりがある。そう、彼はダレイオス1世の息子なのだ。

どういう事かというと、カンビュセス2世が死去し、ダレイオス1世が王座に着く事となったその年、ダレイオス1世はカンビュセス2世の父であるアケメネス朝初代王のキュロス2世の娘との成婚も成し遂げる(カンビュセス2世の姉か妹と結婚したという事になる)。

このキュロス2世の娘との間に生まれたたのが、クセルクセス1世なのである。

つまりクセルクセス1世は初代王キュロス2世の孫であり、2代目王カンビュセス2世の甥であり、ダレイオス1世の息子、という事になる。

まんまと正統な王族の血統を手に入れたダレイオス1世は、このクセルクセス1世を正統派のプリンスとして大事に育てる事となる。4人の専属家庭教師のもと、武術、乗馬、狩り、ゾロアスター教の神学、王に必要なあらゆる教育をほどこされ、16歳の頃にはペルシア軍に入隊。軍ではどんどん昇進し、その後20代でダレイオス1世の相談役に昇進。まさに我々が一般的にイメージするような王族の息子らしい育ち方で育てられたのだ。

しかし彼が32歳の時、父ダレイオス1世が持病により急死。この若さでアケメネス朝ペルシアという強大な帝国を継ぐこととなる。

現在でいえば30歳すぎといえば、やっと会社でそれなりに仕事をまかせられる様になり部下が出来始めた頃、というような時期ではないだろうか。

歴史上の人物では大概がそうなのだが、現代では考えられないような年齢で大きな仕事をしている事に驚かされる。

ペルシア戦争の敗北、そして暗殺。

彼を有名にしているのは、やはり父と同じくギリシャと50年近くに渡り戦ったペルシア戦争ではなだいだろうか。その中でも特に有名なのが映画「300」でも有名なテルモピュライの戦いであろう。

ただ悲しい事にクセルクセス1世はこのテルモピュライの戦いに勝利しているにもかかわらず、200万とも言われるペルシア軍相手に300人という少数で3日間に渡りペルシア軍を足止めし、最後は勇猛に死んで行ったギリシャ軍のスパルタ王レオニダス1世とスパルタの兵たちの方が、この戦いの英雄として有名になっている。

またこのテルモピュライの戦い自体にはクセルクセス1世率いるペルシア軍は勝利を収めているのだが、テルモピュライの戦いで足止めを食ってしまっている間に、ギリシャ軍はサラミスの海戦の準備を整える事ができ、ペルシア軍はこの後すぐに行われるサラミスの海戦でギリシャ軍に歴史的な大敗を喫してしまう。

サラミスの海戦後もペルシア軍とギリシア軍の戦い自体はまだしばらく続くのであるが、このサラミスの海戦の敗北が決定打となりクセルクセス1世自身は戦意を喪失してしまい、部下に後を託し自身はギリシアから帰国してしまうのだ。

この時彼は38歳。ペルシア軍全軍上げての戦争はまだ彼には荷が重かったのであろうか。

本国に帰国してからは、父ダレイオス1世が志し半ばで残した建設事業など、内政に重点をおいて活動していくのであるが、父ほど経済政策に長けていたわでもないようで、放漫な建設事業によりアケメネス朝の財政は悪化し、結果的にアケメネス朝没落の遠縁ともなっていく。

そして紀元前465年8月、クセルクセス1世53歳の夏。アケメネス朝の討幕を狙う自身の親衛隊の隊長に暗殺され、この世を去る。

複雑な謀略の中、偉大なるキュロス大王の孫として生まれ、王の子として育ち、父の始めた戦争を引き継ぎ、最後は政治的謀略による暗殺によってこの世を去ったクセルクセス1世は、ある意味でペルシアという国に翻弄された男なのかもしれない。

今回はこの様に若くしてペルシア帝国を引き継ぐこととなったクセルクセス1世を、どこかまだ幼い表情を残しつつも、懸命に軍を指揮する姿で描いてみた。

川田 ヒデホ

金沢市在住のイラストレーター。仕事のお話や、取材先での出来事、あまり仕事に関係ないけど個人的に気になった出来事、など色々書いています。 お仕事の事やブログの内容などで気になった事があればブログのコメント欄や、スタジオトップのお問い合わせフォームからお気軽にご連絡ください。

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